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2012年10月

草原の輝き

現代にたどりつけない博物館

千葉県の佐倉市に、大きな博物館がある。
元佐倉城跡に立つ歴博(国立歴史民俗博物館)である。
東京国立博物館の1・5倍ともいわれる広大な博物館の圧巻は、
なんといっても6つの時代区分に分けられた展示室である。

こういう博物館にふだんあまり行かない人にも、
歴史がまるでわからないこどもたちにもとてもわかりやすく、
映像や実物の何十分の一に再生されたパノラマを駆使した展示が楽しい。

四方を海に囲まれた日本という国、
日本列島や近隣のアジアの諸国との交流の歴史がつくった
数千年のこの国の歴史。
それらを、私たちがこれまで教えられてきたような英雄伝説で描くのではなく
一人の英雄も登場させずに、
むしろ人びとの暮らしやすみかや文化、
私たち日本人が創り出してきた時代を鮮やかに再生する。

古代・平城京の立体的なまちの再生、
古代集落がどのように生みだされたかの展示、
中世・京都のまちなみのパノラマと人びとの楽しげな生活や文化の再生。
これこそ本当のわたしたちの祖先の生活だったのだ。

ヒーローばかり登場する大河ドラマの中では、
通りがかりの通行人でしかない人、
つまり大多数の人びとによって、
この国も文化もつくられてきた。
そんな当たり前のことを、
ビジュアルを駆使して楽しみながら学習できる博物館である

 歴博は1983年3月に開館した。
開館当時はまだ古代・中世展示だけで、
近世以降は順次開館していくということだったが、
わたしたちはその古代と中世の展示だけで
ほとんど一日を費やしてまだ全部をまわった気がしないほどだった。

 今でも、歴博を最初から見てまわると失敗する。
どうしても古代・中世の展示の面白さに時間をとられ、
近代までたどり着けないのだ。
 ただ展示物を並べて解説を付けるという
旧来の博物館の常識を超えた、
楽しくビジュアルで歴史の全体像もディティールも
つかみとれるような日本で初めての、
そしてそれ以後につくられた
日本のあらゆる博物館づくりの手本になった博物館。
それが佐倉の歴博だった。

開館から30年近くたって、
いま歴博には古代・中世・近世・民俗・近代
そして現代と5つの展示室が完成した。
わたしたちも20人ほどのグループで
久しぶりの歴博ツアーに行ってみた。
今度は古代をあとまわしにして、現代から見てみよう。

展示を見て回るにつれ、
みんなの表情が硬くなってくるのがわかった。

これは何だろう。
兵隊さんの軍服や鉄砲や軍隊生活や、
戦後の団地の部屋の再生が、
わたしたちの現代なんだろうか。
古代から中世・近世と海に囲まれた
この列島の人びとの文化と交流の歴史は、
現代ではどうなったのか。

これなら、2月に見た沖縄歴史博物館の方が
よっぽどいきいきと現代を表現している。
あの悲惨な沖縄戦の歴史を忘れないで再現し、
しかも南方海上に浮かぶ琉球列島の過去と未来を
見事なパノラマで展示したそれと比べても、
この展示はみすぼらしすぎる。
 
現代という歴史は、これを展示した人たちにとっては、
いまだ触れてはいけない怪物なのかもしれない。

国立歴史民俗博物館

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