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2012年2月

2012年2月

草原の輝き

「10年に1度の傑作ミステリー」

この10年で読んだ本の中のベストスリーを上げろと言ったら、
間違いなくこの本の名を上げる。

わずか半年前に読んだ本だが、
それ以来私はこの作者に魅了されてしまった。
たった3作の、『ミレニアム』と名づけられたこのミステリーと比べたら、
その辺のどうでもいいような男と女の甘ったるい関係を
うだうだ書くしかネタがないのかと言いたくなるような、
どこぞの国のへなちょこミステリーとは格の違いがありすぎて、
そのズシリとした重さ深さの世界にもっと浸りたいと思うのだが、
残念ながらその思いは3作で我慢しなくてはならない。
書いた当人が、それを書いてわずか50歳の若さで
心筋梗塞で死んでしまったからだ

『ミレニアム』は発売以来世界中で6500万部が売れて、
日本でも最初の版が出版された時はベストセラーになった。
そして昨年、文庫版が出版されて、ようやく私も読んだのだ。

月刊誌「ミレニアム」の編集者ミカエルは、
大物実業家の違法行為を暴く記事を書くが、
名誉毀損で有罪となり職を失う。
そこへ大企業グループの前会長から
「40年前に失踪した兄の孫娘の事件を調査してくれ」と依頼が来る
。調査は困難で、ミカエルはある不思議な能力をもつ異色の助手を雇う。
それが第1部の題名にもなる
「ドラゴン・タトゥーの女」リスベット・サランデルである。

タイトルになるほどリスベットは強烈な個性で、
近くにいたらとてもつきあいきれないけど
不思議な魅力をもつ彼女の行動を、
胸躍らせて読んでしまうのだ。

まだ読んでいない人のために、あらすじは控えるが、
あと3ヶ月以内に読まないとばらしちゃう、
と言っても脅しにはならない。
すでにもう映画化されてしまったから。
実は今月は小説『ミレニアム』よりは、
映画の『ドラゴン・タトゥーの女』のことがメインである。

全3部の小説を読めばわかるが、
たとえば読み進めていくとある章の裏のページにはこある。
「スウェーデンでは女性の18パーセントが男に脅迫された経験を持つ」
あるいは「スウェーデンでは女性の13%が、
性的パートナー以外の人物から深刻な性的暴行を受けた経験を有する」

私たちのイメージする白夜と社会民主主義の国
・スウェーデンとは違うスェーデンだが、
この背後には、狂信的ナチズムの存在がある。
しかも戦後スウェーデンではナチやネオナチの存在が社会を侵していて、
それは女性への暴力というかたちでも表現されている。

ラーソンがこの優れたミステリーを書いた大きな動機がそれなのだ。
ラーソンはまた社会的不正義への強い怒りを持ってる。
第1部の主要な敵は、悪徳企業家でもある

映画版では、『007』の主役で、それまでの、
一つ間違えばただの女たらし映画に過ぎなかった007シリーズを、
テンポの早いハードボイルドの傑作に変えた
ダニエル・クレイグのミカエルも、
強烈な個性のリスベットを演じる
ルーニー・マーラ(アカデミー主演女優賞ノミネート)
もそれなりにいい。映画も原作の世界をきちんと描いていて、
十分評価できるいい映画だと思う。

それでも、原作の『ミレニアム』の描いた、
現にいまもあるに違いないネオナチや暴力や
(そういえば無差別銃乱射大量殺人はこの国だった)、
企業の闇を、やはりアメリカ映画では描ききれない。
だってそうでしょ。
アメリカはアメリカンドリ-ムの国。
成功する企業は評価され、
銃は社会に蔓延している。
自分のことは自分で守る国である。
それは同時に、世界を自分だけの基準で罰せられることもできる国なのだから。

だから、いい映画だから見なさいとおススメするが、
見たらぜひ原作の『ミレニアム』を読みなさいとつけ加えることは忘れないのだ。

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