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2012年9月

草原の輝き

人知れず輝く自費出版文化賞

日本は出版大国である。
若い世代の活字離れが進んでいるとはいえ、
出版社からは年間700万点が出版されている。
それだけでもすごいが、実はほぼ同じ数の出版物が、
自費出版で発行されているという。

いま自費出版ブームはすごい。
私のまわりでも何人かの人が自費出版している。
たいていは自分の人生をふり返ったものが多くて、
生きてきた足跡を残したい、
家族やこどもたちに生きた証を残しておきたいという動機が
自費出版ブームを支えている。
巷は「自分史ブーム」なのである。

しかし、それだけで700万点も自費出版が出るだろうか。
9月4日に東京・吉祥寺の東急インで開かれた
「第15回日本自費出版文化賞発表会」で、その疑問が解けた。

「日本自費出版文化賞」は、
自費出版を手がける中小出版社の自費出版ネットワークと
印刷業界団体が提携して毎年発表している賞である。
審査員は「自分史」という言葉を生んだ歴史家・色川大吉氏、
ルポライター・鎌田慧氏、直木賞作家・中山千夏氏と超一流で、
いちおう朝日新聞社が後援しているが、
実はあまり知られていない賞である。
たぶん主催団体が地味なせいだからだろう。

しかし、賞の対象になった66点の候補作品を紹介されて驚いた。
自費出版=お年寄りの回顧録というイメージはひっくり返され、
その多種多様さに驚く。

たとえば大賞は『日本奇術演目事典』。
日本の古来からある奇術のさまざまな演目を徹底して調べ集めた
奇術への情熱を感じさせる天下の奇書である。

さらに、小説、エッセイ、詩歌、研究・評伝、
写真など各部門ごとの賞もあり、
中には本屋にあればすぐに飛びつきたいものもある。

たとえば『美しい水都が見えた~河内王朝時代の大阪地形を復元する』は、
いにしえの水都・大阪を詳細で緻密な絵図で再現した労作で、
発想の豊かさにわくわくする。
 
写真集の『風雪に耐えてーある中国残留孤児の記録』の写真は、
胸をつくものがあったし、『海に墓標をー父の最後の地ベトナムー』や
『帝国陸軍 高崎連隊の近代史』など、
戦後76年過ぎて忘れ去られようとしている
あの戦争の記憶を刻印しておこうという試みもある。

『天地明察』にも登場した和算家の生涯を追ったもの、
ハンセン病療養所の「隔離」の中の結婚と
こどもについて書いた本もある。

この宝庫のような出版物は、
ほとんどが知られることもなく消えてしまう。
それをできるだけ多くの人びとに読んでもらおうと、
この賞は生まれた。

どこか大きな書店で、
全受賞作を展示販売してくれないものだろうか。
もっとも、地方出版社の受賞作はその地域の書店の店頭で
「自費出版文化賞受賞」と展示販売するらしい。
地域と出版物が結びついて、とてもいいことだと思う。

ところで、実は大手出版社は
みな自社で自費出版をしているそうだ。
名前貸しをして、経費は本人がすべて支払い、
もし売れれば儲かる。
出版社としてはおいしい商売である。

だったら、大手出版社も自費出版文化賞の支援団体になり、
出版界全体で、この地道で貴重な出版文化の担い手たちを
支えてあげてもいいのではないか。

第15回日本自費出版文化賞発表会

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