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2013年7月

2013年7月

草原の輝き
2013年7月

寂しい大学の人びと

私の友人に大学の講師がいた。中世文学が専門の、
まるで漱石の小説に出てきそうな、
白いシャツの似合う真面目な青年だった。
大学の非常勤講師だから、講義のコマ数(おおよそ1コマ2万5千円)が命である。
今日は千葉、今日は女子大と、いつも首都圏をあちこち駆け回って忙しい。
 
常勤の講師(つまり定職)にならないのと聞くと、
努力しているんだけどねと、少し寂しそうに笑う。
その道も、狭き門らしい。よほど強力な引きがない限り、難しい。
 
ある時、どういうわけか韓国の大学で日本の中世文学を教えることになり、
ようやく常勤の職を得た。将来は教授の道も開けたのかな。
彼が隣国に渡ってすぐ、非常勤講師たちに降りかかった運命を知った。
私も何度も訪れ、友人も多い都内の有名私学の学長が、
非常勤講師たちから訴えられた。
きっかけは労働契約法がこの4月から改正され、
通算5年勤務の有期契約労働者は希望すれば「期間の定めのない契約」
に転換できるようになったことだ。
これなら、彼も日本で常勤講師になれたかもしれない。
 
だが、その某有名私学は、なんと非常勤講師全員を
5年以内に全員雇い止めできるように「就業規則」をつくりかえてしまったのだ。
その大学の非常勤講師の数は3762名、これは全教員の59%にあたる。

さらに、非常勤講師が受け持つ授業の上限を週4時限までとする通知を出して、
非常勤講師たちをさらに追いつめた。
いま評判の、社員が自殺するほど酷い待遇で追いつめるブラック企業の話ではない。
かつては野にいて道を過つ政治や社会に強い反対の主張をして尊敬された大学が、
そんなことをするほど変質していることに、
驚く人もいれば、落胆するものもいるだろう。
 
しかも、それらの方針を決めた理事の中には、労働法の教授もいる。
学長は弁護士で、法学学術院の教授で、民法の先生である。
いった彼らはどうしてしまったのだ。
もっとセコイことに、就業規則の制定のために過半数代表者の意見聴取があったが、
そこには非常勤講師の姿がない。過半数代表者に信任手続きを知らせる文書は、
授業が終わり非常勤講師が大学に立ち入らない時期に
講師控え室に就業磯区制定に配布したという。
そして、非常勤講師の運命を決める就業規則制定の手続きなのに、
候補全員が専任講師となった。こういうセコイ学問のことを何というのだろう。
 
そんな非道い仕打ちに泣き寝入りをしない
首都圏非常勤講師たちの組合代表の女性委員長は、
「高学歴ワーキングプアの放置は大学の崩壊につながる」と指摘する。
掛け持ちしないと生活できないので学問を深める勉強もできない非常勤講師、
それにものすごい雑用でもちろん専門の学問を深める時間がない専任講師たち。
だが、そういう講師たちに学生は学問を教えられる。
 
かつて大学改革の旗を振っていた学生たちは、
いまの大学の姿を見て、どう思うのだろうか。

 いま頃、隣の国のミョンドンあたりを白シャツで逍遙する友人が、

ものすごく幸せに見えてきた。

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